h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

超選択的動注化学療法および化学塞栓療法の基礎的研究 (3) ―脂質製剤の使用―

 目的:新しく調整したリポソームーシスプラチン懸濁液(liposome-CDDP {cis-Diamminedichloroplatinum} emulsion : Lip-CDDP)とVX2腫瘍をもちいて,超選択的動注化学療法(superselective transcatheter arterial chemotherapy : STAC)およびイミペネム・シラスタチン懸濁液(imipenem-cilastatin sodium : IPM/CS)併用超選択的化学微小塞栓療法(superselective transcatheter arterial chemo-microembolization : STACME)を行い結果を分析するとともに,既報のシスプラチン(CDDP)単体投与の結果と比較し,抗癌剤封入脂質製剤の有用性を検討した. 材料と方法:体重4kgの雄性日本白色家兎耳介にVX2腫瘍細胞浮遊液を移植.移植14日後に,①耳介動脈からLip-CDDPのみを超選択的に動注したSTAC/Lip群(n=9)および②IPM/CS懸濁液2ml先行投与後を超選択的に動注したSTACME/Lip群(n=9)の2群を設定し,投与直後,5分後,15分後の腫瘍,腎,血液プラチナ(platinum : Pt)濃度を測定した.また,移植7日後の担癌家兎を用い, STAC/Lip群(n=3)およびSTACME/Lip群(n=3)の薬剤投与5日後の腫瘍成長率,および腫瘍と腎Pt濃度を測定した.併せて,以前報告したCDDP単体投与におけるSTAC (STAC/Cis群)およびSTACME (SRACME/Cis群)の結果と比較検討した. 結果:投与直後,5分後,15分後のSTAC/Lip群の腫瘍内Pt濃度は,それぞれ17.0±1.6μg/g,18.7±2.6μg/g,12.9±1.8μg/gであり, STACME/Lip群においては18.2±1.4μg/gi 14.3±4.4μg/g, 20.9±2.1μg/gであった. CDDP単体投与との比較では,15分後にSTACME/Lip群はSTAC/Cis群, STACME/Cis群と比較してそれぞれ有意に高い濃度を示した(p<0.05). 投与5日後におけるSTAC/Lip群とSTACME/Lip群の腫瘍成長率は, 88.0±23.8%,22.9±8.8%であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05).CDDP単体投与との比較では,STAC/Lip群とSTACME/Lip群は, STAC/Cis群(p<0.01)および対照群(p<0.01)と比較して有意に成長が抑制されていた.投与5日後の腫瘍内Pt濃度は, STAC/Lip群,STACME/Lip群ともに0.99土0.22μg/g, 1.27±0.14μg/gと比較的高い濃度を維持しており,CDDP単体投与と比較して有意に高い値を示した. 結論:リボソームを用いたCDDPのSTACおよびSTACMEは,長期にわたる腫瘍内Pt濃度の維持と,優れた腫瘍成長抑制効果を示し,効果的な投与法であることが示唆された.                             (平成11年10月26日受理)
著者名
粟飯原 輝人
25
4
287-295
DOI
10.11482/KMJ25(4)287-295.1999.pdf

b_download