h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

マウス嗅粘膜発生と嗅上皮における細胞死の組織学的観察

 胎生12日,14日,16日および生後2日目のICRマウスを用いて,嗅上皮の発生とそれに伴う細胞死について光顕, TUNEL法および走査電顕で観察し,鼻腔の発生,嗅上皮の鼻腔内での分布,嗅上皮3層の分化および嗅上皮内における細胞死と細胞分裂の局在について検討した.胎生12日の鼻腔上皮は,大型明調核を有する上皮細胞からなる多列上皮で,嗅上皮と呼吸上皮とは明瞭に区別できないが,胎生14日では支持細胞層,嗅細胞層および基底細胞層の3層を持つ嗅上皮を鼻腔上部で区別できるようになり,嗅上皮表面に嗅小胞と長い嗅線毛を走査電顕で確認できる.嗅上皮内には濃縮核を有するTUNEL反応陽性の死細胞が出現する.胎生14日の嗅上皮に含まれる細胞分裂は嗅部と呼吸部に均等に多数認められるが,細胞死は嗅部に特に多い.死細胞は外鼻孔端より後部鼻腔まで広く出現し,特に鼻腔天蓋と外側壁に多く,鼻腔のいずれの部位でも鼻中隔上の内側壁嗅上皮には少ない.死細胞は嗅上皮内で特に浅層と中間層すなわち支持細胞層と嗅細胞層とに多く,基底細胞層には稀で,細胞死の分布に嗅上皮内の層で局所的な差違が認められる.嗅上皮内のアポトーシスの意義を鼻腔の発達と関遽して検討した.     (平成11年9月13日受理)
著者名
森 幸威
25
3
211-221
DOI
10.11482/KMJ-J25(3)211-221.1999.pdf

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