Online edition:ISSN 2758-089X
定量的超音波法による脛骨皮質骨の骨量測定の基礎的検討
現在,種々の非侵襲的な骨密度(BMD)測定法が開発され,骨粗鬆症の臨床に供されているが,定量的超音波法(QUS)は被曝を伴わずBMDを評価できる方法として期待されている.今回, QUSのうち,皮質骨のBMDを測定できる脛骨超音波BMD測定装置(Sound Scan 2000)を使用し,基礎的検討を行ったので報告する. 対象は健常者および骨粗鬆症患者265例(女性261例と男性4例)である.脛骨の超音波伝播速度(SOS)の測定精度は,日内変動がCV =0.60%,日差変動についてはcv =0.99%であり,良好であった.6例(全例右側が利き手)のSOSの左右差に関しては,左側が右側よりも有意の高値を示した(p<0.01).また,測定位置によるSOSの変化は,5cm遠位部が中央部に比して+3.6±2.4%の高値cm近位部が-1.0±2.2%の低値を示し,前者が後者に比して有意に高値を示した(p<0.02).女性例のSOSの年齢分布は40歳代以降で加齢に伴い減少することが認められた.体格指標と若年女性のSOSの相関については,身長との間に軽度の相関が認められたが,体重やBMIとは相関が認められなかった.他部位のBMD値との相関については,皮質骨が主体の橈骨BMD (r =0.557,p<0.001)との相関が,腰椎BMD (r =0-383, p<0.01)および大腿骨頚部BMD (r =0.354, p<0.05)より良好であった. このように,基礎的検討からQUSによる頸骨皮質骨SOSの測定は,皮質骨のBMDの評価が可能で,測定精度が良好であるが,測定側および測定位置を一定に保つことに留意して行うことが必要であるということが示された. (平成11年9月10日受理)
- 著者名
- 野上 利香
- 巻
- 25
- 号
- 3
- 頁
- 203-210
- DOI
- 10.11482/KMJ-J25(3)203-210.1999.pdf