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Online edition:ISSN 2758-089X

ラット中大脳動脈閉塞モデルにおける虚血・再灌流後の梗塞巣と局所脳血流量の変化に関する実験的研究

 再潅流可能なラットの中大脳動脈閉塞モデルを用いて虚血・再潅流後の梗塞範囲と局所脳血流量(rCBF : regional cerebral blood flow)の変化について検討した.実験群は雄性ラット43匹を1 , 2, 26時間の永久虚血群と, 1,1.5, 2, 3時間虚血負荷後に血流を再開し,虚血開始26時間後に観察する再潅流群とに分けて行った.また観察部位は,虚血中心部とその周辺部である虚血辺縁部,さらに直接虚血に曝されないが虚血中心部と密な神経線維連絡を有する虚血遠隔部の3部位について検討した. 梗塞範囲について,26時間永久虚血群では虚血中心部のみならず虚血辺縁部におよぶ広範囲の梗塞を生じていた.再潅流群において虚血負荷時間が1時間の場合は虚血中心部のみに梗塞を生じたが1,5時間では虚血中心部のみに梗塞を生じる群と虚血辺縁部までその範囲が及ぶ群の2つの梗塞パターンがみられた.さらに2時間では26時間永久虚血群と同等の範囲が梗塞に陥り,3時間の虚血負荷では26時間永久虚血群より増加した. 永久虚血群の虚血中心部,辺縁部では虚血時間に応じてrCBFは減少したが,虚血遠隔部の虚血側の黒質,視床後腹側核では虚血早期よりrCBFの増加を認めた.再潅流群では永久虚血群と異なり,虚血時間に応じてそれぞれ異なったrCBF変化を示し,虚血中心部では虚血時間1.5時間以内では高血流にそれ以上では低血流になった.虚血辺縁部では虚血時間に応じて進行性に血流が低下し,特に1.5時間を境に著しく低下した.また虚血遠隔部においては,部位によりその反応性に違いが見られた. 今回の実験モデルにおいては,再潅流群の虚血辺縁部のrCBF変化,梗塞範囲,梗塞率の結果から, 1.5時間以内の再潅流ならば回復の可能性があると思われるが,3時間以上の脳虚血の場合はむしろ病態を増悪させる可能性があると思われた.また虚血遠隔部のrCBF変化については,永久虚血群,再潅流群とも虚血中心部の障害に応じたtransneuronalな影響が示唆されたが,部位によりその反応性に違いがみられた.                               (平成11年8月19日受理)
著者名
宮軒 将
25
3
181-192
DOI
10.11482/KMJ-J25(3)181-192.1999.pdf

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