h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

膵癌進展過程における matrix metalloproteinaes (MMPs) の役割と膵癌血清診断への応用に関する基礎的研究

 ヒト膵管癌の実験系であるハムスター膵発癌系において,細胞外基質分解酵素であるmatrix metalloproteinases (MMPs)の膵癌発生および,進展過程に対する役割を明らかにするとともに,血清中のMMPsの測定による膵癌血清診断の可能性を検索することを目的とした.材料としてニトロサミンにより誘発された原発性膵癌(primary pancreaticcancer,PC),ハムスター膵管癌皮下継代移植株(transplantable hamster pancreatic ductcarcinoma,HPDt)およびHPDtより培養樹立したハムスター膵管癌培養株(hamsterpancreatic duct carcinoma cell line, HPDc)を用い, MMP-2, -9, TIMP-1, -2,膜型MMP (MT1 -MMP)のmRNA発現をノーザン解析にて, MMP-2蛋白の発現を免疫組織化学染色にて,更に,その酵素活性をゼラチンザイモグラフィーにより解析した.またHPDtをハムスター背部皮下に移植し,腫瘍の増大にともなう血清中のMMPs発現をゼラチンザイモグラフィー解析により検討した.ハムスター正常膵臓(normal pancreas,NP)と比較してPCおよびHPDtではMMP-2, -9, TIMP-2, MT1 -MMP のmRNAの過剰発現がみられた.HPDcではいずれも有意な発現上昇はみられなかった.抗MMP-2抗体による免疫組織化学染色では,膵管上皮の過形成,異型過形成,膵管内癌,浸潤癌と病変が進展するにつれMMP-2蛋白発現が強くなる傾向がみられた.さらに,活性型MMP-2の発現はPC,HPDtで上昇しており,またMMP-2活性化率とMT1-MMPのmRNA発現量が正の相関を示した.血清中のMMPs発現量は腫瘍の増大と相関していた.以上の結果よりハムスター膵癌の発生および進展にMMP-2の発現活性化が重要であること, MMPsをマーカーとした膵癌の腫瘍血清診断の可能性が示唆された.                               (平成11年2月23日受理)
著者名
伊木 勝道
25
1
1-10
DOI
10.11482/KMJ-J25(1)001-010.1999.pdf

b_download