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Online edition:ISSN 2758-089X

インドメタシン誘発ラット小腸潰瘍におけるtransforming growth factor (TGF) - β の発現およびレシチンの治療効果に関する研究

背景:小腸粘膜傷害における transforming growth factor (TGF)-βの発現は未だ明らかにされていない.そこで,インドメタシン誘発ラット小腸潰瘍モデルにおけるTGF-β発現と本小腸潰瘍モデルに対するレシチンの効果を検討した.方法:1)雄性Wistar系ラットにインドメタシンの経肛門的投与で小腸潰瘍を誘発し.経時的に小腸を摘出した.病変部のパラフィン切片を作成し,酵素抗体法を用いてTGF-βを免疫染色した.腸間膜付着側および対側のTGF-β陽性細胞数をインドメタシン投与群と非投与群で経時的に比較した.2)インドメタシン投与直後より, 2.5%エタノールに溶解したレシチン投与群(lecithin群),2.5%エタノール投与群(vehicle群)および無治療群に分け,小腸に対する開放性潰瘍の長さ(UIL),幅(UIW)と潰瘍中心部の腸壁の厚さ(WT),およびTGF-β陽性細胞数を比較検討した.結果:1)TGF-β陽性細胞は,粘膜固有層および粘膜下層内に認められ,インドメタシン投与3時間後から24時間後にかけては,腸問膜付着側および付着対側でともに陽性細胞数が増加した.3日後と7日後には腸間膜付着対側で,21日後には腸間膜付着側でTGF-β陽性細胞数が非投与群よりも有意に多かった.2)14日後の腸間膜付着対側のTGF-β腸性細胞数はlecithin群とvehicle群で無治療群よりも有意に多かった.また,同時期において,lecithin群は無治療群よりもUIWとWTが有意に低値を示し(p<005),UIL.も低値をとる傾向を認めた(P=0.09).結論:TGF-β群は小腸粘膜傷害の初期からその発現が増加すると考えられた.一方,レシチンは小腸潰瘍の治療を促進し,治癒過程におけるTGF-βの発現とは無関係に腸管壁の肥厚を軽減させる可能性が示唆された.             (平成12年10月12日受理)
著者名
天野 角哉
26
4
223-232
DOI
10.11482/KMJ-J26(4)223-232.2000.pdf

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