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Online edition:ISSN 2758-089X

血液透析患者に発生した腹直筋血腫の1例

 外傷などの明らかな外力を伴わない非外力性腹直筋血腫は稀な疾患であり,他疾患として手術される場合もあり注意が必要である.最近,凝固異常疾患や,抗凝固療法中に発生する本症の報告が散見されるようになった.今回,我々は透析導入後に腹直筋血腫を発症した症例を経験したので本邦報告例を集計して報告する.症例は75歳の女性で,多発性結節性動脈炎による腎機能障害のため,ヘパリン使用による血液透析が行われていた.透析導入から約1週間後に右下腹部痛が出現し,腹部エコー,CTにて腹直筋血腫と診断した.ヘパリン使用による透析を中止し,手術すること無く保存的に治療し得た.本邦では1928年の茂木の報告を最初に,84例の報告があるが,その内,透析中の発症は3例に過ぎなかった.しかしながら,今後,透析療法施行患者が増えるにつれ本疾患も増加してくる事が予測されるため,十分考慮に入れるべき疾患と思われる.     (平成10年8月17日受理)
著者名
伊木 勝道,他
24
2
113-118
DOI
10.11482/KMJ24(2)113-118.1998.pdf

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