肝細胞癌肺転移に関する免疫組織化学的研究―剖検例における転移群と非転移群の比較― 針生検診断時に,原発性肝細胞癌(以下, HCC)の肺転移性を予測する細胞学的諸因子について検討した. 139例のHCC剖検例を対象として,肺転移を伴う群と伴わない群につき,臨床病理学的検討と,同68例を対象として,E-カドヘリン,ラミニン, CD34,P21/CIPI/Waf1,P27/KIPIの各マーカーの免疫染色による比較検討を行い,肺転移に関わる諸因子を検索した. HCC剖検肝では,臨床病理的事項のうち,脈管侵襲以外に病悩期間,AFP高値,リンパ節転移,核分裂指数(MI)高値,および癌細胞の分化度の低下が,染色マーカーについては,E-カドヘリンの発現の低下が肺転移予測の指標になりうると考えられた. (平成10年7月8日受理)