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Online edition:ISSN 2758-089X

胎生および新生マウス腎臓における細胞死の組織学的観察―特に皮質ネフロン形成細胞の分化との関連―

 腎臓の発達時に出現する細胞死について,ネフロン形成との関連を明らかにすることを目的として,胎生後期から出生直後のマウス腎臓を光学顕微鏡で観察した.胎生18日,生後0日および生後2日で摘出した腎臓から1μm厚の水溶性樹脂準超薄連続切片を作成し,また一部はパラフィン切片を作りTUNEL法で観察した.胎生18日~生後2日の腎臓皮質と髄質には多数の核分裂像にまじって,核が濃縮・凝集して断片化する細胞が出現する.死細胞の単位面積当たりの数は出生後増加する傾向があり,とくに髄質で胎生18日から生後2日の間に約3倍に増加する.細胞死はネフロン形成細胞群と間質細胞群のどちらにも出現し,皮質では被膜の直下に,髄質では腎乳頭の先端部付近に多く認められる.この死に至る細胞はTUNEL法で陽性であり,アポトーシスの過程で死に至ると判定される. 皮質におけるネフロンの形成過程は,はじめ2分枝した尿管芽の先端部付近に間葉細胞が集まって造腎帽子となり,次いでカンマ型腎胞,そしてS字型腎胞へと発達する.S字型腎胞期に毛細血管が腎胞内に進入し,腎胞先端部の細胞から糸球体包が形成される.皮質ネフロン構成細胞群における細胞死は,とくにS字型腎胞期で多く認められ,腎胞先端部の部位に局在して,尿細管に分化する前駆細胞中には少ない.細胞死はS字型腎胞期から未熟な腎小体中に出現する.プログラム細胞死と皮質におけるネフロン形成細胞の分化との関連を考察した.(平成10年4月30日受理)
著者名
進藤 彰久
24
1
7-15
DOI
10.11482/KMJ24(1)007-015.1998.pdf

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