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Online edition:ISSN 2758-089X

モルモットコルチ器支持細胞の電気的特性に及ぼすカナマイシンの影響

 哺乳類のコルチ器は音刺激によって振動する基底板上に位置し,内,外有毛細胞(IHC,0HC)の2種類の感覚細胞群と,これらを周囲から支える支持細胞群により構成されている.音受容機構は,その全容は未だ解明されておらず,現在も広範囲に研究されている.その中で,支持細胞も構造的支持機能だけでなく,音受容に関与している可能性が示唆されている.本研究の目的はコルチ器支持細胞群,特にダイテルス細胞(DCs)及びベンゼン細胞(HEs)の膜興奮性Kチャンネルの電気生理学的特性を明らかにし,併せて,0HCに対し重篤な障害を引き起こす事が臨床的に良く知られているアミノ配糖体系抗生物質であるカナマイシン(KM)の支持細胞に対する作用から,支持細胞とOHCの共通性及び相違性を見い出す事である. モルモットの蝸牛からDCs及びHEsを単離し, conventional whole cell パッチクランプ法を用いて,膜電流の変化を調べた.その結果,次の諸点が明らかになった.(1) DCs,HEs共に,膜電流の8O%は電位依存性外向きK電流であった.(2)細胞外からKMを投与すると,この電位依存性外向きK電流は, DCsにおいてのみ急速に増加した.(3)この電流は,細胞外Caイオンに,対する依存性は示さなかった.(4)一方,HEsの電位依存性外向きK電流は,KMの影響を全く受けなかった. 以上の結果から, OHCの膜電位依存性Caチャンネル,メカノセンサーチャンネルの抑制を引き起こすことが知られているKMは,DCsの電位依存性外向きK電流を著明に増幅させることが示された.これは,DCsのKチャンネルの開口が,KMによって著明に増幅されることを示す.同様の現象は,OHCでは,報告されておらず,DCsの特異的現象と考えられる.                           (平成9年10月28日受理)
著者名
奥本 香苗
23
3
155-164
DOI
10.11482/KMJ23(3)155-164.1997.pdf

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