Online edition:ISSN 2758-089X
一酸化窒素(NO)のヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン代謝への影響
一般に神経伝達物質または血管拡張因子として知られる一酸化窒素(NO)は,創傷局所においてマクロファージや好中球により産生され,創傷治癒機転に関与する可能性がある.本研究で著者は,NOのヒト皮膚由来線維芽細胞に対するコラーゲン代謝に関する検討を行った.ヒト皮膚由来線維芽細胞をNO産生物質で刺激し,α1(I)およびα1(Ⅲ)コラーゲン,コラゲナーゼの発現をタンパク,酵素活性,メッセンジャーRNA(mRNA)の各レベルで検討した.その結果,NOが転写レベルからのコラーゲン合成,コラゲナーゼを含むプロテアーゼの活性の亢進に作用することが認められた.これらの結果は,NOが炎症部位においても,細胞間メディエーターとして機能し,それを受容した皮膚線維芽細胞のコラーゲン代謝を亢進させることにより,創傷治癒過程に関与することを示唆している. (平成9年10月20日受理)
- 著者名
- 大槻 真澄
- 巻
- 23
- 号
- 3
- 頁
- 135-142
- DOI
- 10.11482/KMJ23(3)135-142.1997.pdf