h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

ヒト口唇腺形質細胞の電子顕微鏡ならびに免疫組織化学的観察

 ヒトロ唇腺の分泌部周囲に分布する形質細胞を,超微形態的および免疫組織化学的に観察した.大多数の漿粘液細胞と少数の漿液細胞からなる口唇腺の分泌部周囲の結合組織には,自由細胞として形質細胞が多数存在する.形質細胞の細胞質は豊富な粗面小胞体で満たされ,粗面小胞体は一般に100 nm 以上に内腔が拡張するものが多い.ラッセル小体を有する形質細胞も少数分布する.形質細胞の細胞質内には,2種類の特異な封入体が観察された.すなわち双円筒状を呈するリボソーム層板複合体と,拡張した粗面小胞体の内腔に出現する槽内結晶封入体である.分泌部周囲の結合組織中の大多数の形質細胞はlgAに対して強い陽性を呈し,少数がlgG陽性を呈する.ラッセル小体を含有する形質細胞のみlgMに陽性である.lgAならびにlgG陽性反応は,形質細胞以外の分泌部の粘液産生細胞の一部や,腺房内腔および導管特に介在部上皮細胞にも認められ,一方,lgM陽性反応は小葉内結合組織中にのみ広くびまん性に観察された.唾液に含まれる分泌型lgAと口唇腺形質細胞との関連性ならびにlgA,lgGおよびlgMの口腔免疫機能における役割を考察した.                               (平成9年8月15日受理)
著者名
竹本 琢司
23
2
87-97
DOI
10.11482/KMJ23(2)087-097.1997.pdf

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