Online edition:ISSN 2758-089X
頭頸部領域および食道領域の各種症状に対する食道運動機能の関与について -High Resolution Manometry を用いた検討-
頭頸部領域および食道領域における各種症状に対する食道運動機能の関与を検討した.
2007年9月から2012年6月までに,咽喉頭異常感などの頭頸部領域の症状および嚥下困難感,胸痛,
胸やけなどの食道領域に関連した症状を主訴に,当科を受診した261例(男性138例,女性123例,
平均年齢56.8±17.1才)を対象とし,健康関連QOL(Health Related Quality of Life: HRQL)
の測定と食道内圧検査を施行した.健康関連QOL の検討では,咽喉頭違和感,嚥下困難感,胸
やけ等の各症状を訴えた患者で,身体的QOL,精神的QOL を表すPCS(physical component
summary)あるいはMCS(mental component summary)が低下し,健常者と比較して有意に
QOL の低下を認めた.食道内圧検査による食道運動機能異常は,全対象患者中62.0% に認めた.
各症状別に食道運動機能障害の内訳を見ると,咽喉頭違和感ではIEM(ineffective esophageal
motility)(31.8%),嚥下困難感は食道アカラシア(56.6%),喉のつかえ感は食道アカラシア(35.5%),
胸やけはIEM(39.4%),胸痛は食道アカラシア(50.0%),噫気はIEM(50.0%)を最も多く認め
た.咽喉頭違和感,嚥下困難感,喉のつかえ感,胸やけ,胸痛などの頭頚部および食道症状を有す
るものの,器質的疾患を認めない患者のQOL は障害されており,その病態の一つとして食道運動
機能異常の存在を念頭に置き,診療にあたることが重要である.
(平成24年10月5日受理)
- 著者名
- 筒井 英明,他
- 巻
- 39
- 号
- 1
- 頁
- 1-11
- DOI
- 10.11482/2013/KMJ31(1)1-11.2013.pdf