h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

ヒトロ唇腺における形質細胞の計量組織学的観察

形質細胞とヒト各種唾液腺との関連性を明らかにすることを目的として,主に光学顕微鏡を用い口唇腺と大唾液腺を計量組織学的に検討した.口唇腺は口唇の粘膜下組織にあり,排出導管に1ないし数葉が連続する幅約1~3mmの複合腺である.葉は複数の小葉と小葉間結合織からなる.分泌部は粘液腺細胞が主体で,隣接する腺房間には腺房周囲結合組織があり,結合組織には自由細胞特に形質細胞が多い.形質細胞は電顕レベルでよく発達した粗面小胞体をもっており,成熟像を呈するものが多い.形質細胞は口唇粘膜固有層や口唇腺小葉間結合組織にも含まれるがその数は少ない.腺房周囲,小葉間および粘膜固有層結合組織における単位面積当たりの形質細胞数は,腺房周囲結合組織486±180個,小葉間結合組織20±18個,粘膜固有層1個で,とくに腺房周囲に有意に多い(p<0.01).大唾液腺の腺房周囲結合組織単位面積当たりの形質細胞数は耳下腺58±32個,顎下腺143±42個,舌下腺496±176個で,舌下腺で口唇腺と同様の有意の高値をとる(p<0.01).ヒト大・小唾液腺の腺房周囲結合組織の形質細胞密度は,口唇腺≒舌下腺>顎下腺>耳下腺の順で,形質細胞はとくに粘液分泌腺と強い親和性が認められた.腺房周囲結合組織に分布する形質細胞と唾液に含まれるIgAとの関連について考察した.    (平成8年3月25日採用)
著者名
竹本 琢司
22
1
19-28
DOI
10.11482/KMJ22(1)19-28.1996.pdf

b_download