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Online edition:ISSN 2758-089X

岡山県における肝吸虫症の疫学的研究(9)流行地でのマメタニシの生息と環境要因について

岡山県南部の肝吸虫症流行地において1979年と1991年の夏期に5地区9地点(用水路5地点,水田4地点)で第1中間宿主マメタニシの生息の有無を,水質(水温, pH,溶存酸素,塩素量),用水路の構造および植生との観点から調査した.マメタニシは1979年には9地点中8地点で生息を認めたが, 1991年には1地点で確認できるのみになった.水温, pH,溶存酸素に関しては, 1979年と1991年の同一地点の測定値を比較してもほとんどの地点で有意な変化はみられなかったが,塩素量に関してはマメタニシの生息が認められなくなった7地点および生息数が激減した1地点の計8地点中4地点で平均値の範囲が53-99 ppm (1979年)から23-50 ppm(1991年)と有意に低下していた.マメタニシが生息しなくなった3地点の用水路はいずれも側壁や水底がコンクリート化されイネ科植物等の水生植物が消失していた.マメタニシの生息に関して物理的環境に依存する植生要因が水質要因より重要である事例が示された.                          (平成8年4月13日採用)
著者名
大山 文男,他
22
1
29-35
DOI
10.11482/KMJ22(1)29-35.1996.pdf

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