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Online edition:ISSN 2758-089X

甲状腺乳頭癌におけるground glass nuclei の出現に関する研究―包埋標本作成時における非加熱の影響について―

甲状腺乳頭癌の組織学的な特徴的所見の1つとしてground glass nuclei (GGN)がある.このGGNはパラフィン包埋標本では高頻度に出現するが,細胞診や凍結切片標本ではその出現は極めて稀であるといわれている.したがって, GGNは固定あるいは包埋過程によって生じる一種の人工産物の可能性が示唆される.著者は,乳頭癌のGGNの出現に関しては固定期間が長いほど,ホルマリン液の濃度が高くなるほど,高頻度に出現し,複合固定液で固定された組織では高頻度に出現することを既に報告している.本論文では,パラフィン包埋法による切片作成時の加熱がGGNの出現に影響を及ぼしているか否かを検討する目的で,永久標本作成にあたり加熱処理を行わないセロイジン包埋法を試み, GGNの出現に関する検討を行った.甲状腺乳頭癌では,非加熱のセロイジン包埋法を用いてもGGNは出現した.GGNの出現は加熱による結果ではないことが判明し,包埋法の如何に拘らず乳頭癌にみられる特徴的な所見であると思われた.                  (平成7年3月18日採用)
著者名
清野 徳彦
21
1
21-25
DOI
10.11482/KMJ21(1)21-25.1995.pdf

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