h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

家兎球海綿体筋反射の電気生理学的研究―健常家兎および脊髄損傷家兎での検討―

球海綿体筋反射(Bulbocavernosus reflex, BCR)は末梢神経障害や脊髄損傷時の各種指標として臨床的に用いられている.しかし,動物モデルを対象とした電気生理学的研究についての報告は数少ない.この研究では23羽の健常家兎を用いてBCRの誘発筋電図の記録を試みた.さらに,このうち22羽の家兎では第12胸椎レベルでの脊髄損傷を作製し, BCRに及ぼす影響について検討した.健常家兎のBCRには潜時の異なる2種類の波形を認めることができた. 8.4~19.4 msecの潜時を持つ短潜時波形(SLW)は,仙髄を介した多シナプス性反射であり, 50.0~94.0msecの潜時を持つ長潜時波形(LLW)も脊髄損傷後に残存することより損傷部以下に存在する反射回路からの放電と考えられた.核上性脊髄損傷後早期よりBCRは出現し,誘発筋電図で明らかな脊髄ショックの時期を認めることができなかった. SLWは脊髄損傷後2週間,4週間で潜時,持続時間,振幅に有意な変化は認めなかった.LLWは健常家兎に比べ脊髄損傷後4週間で潜時が短縮し持続時間が延長する傾向が認められた(p<0.1).損傷部以下の後肢筋には著明な痙縮と筋萎縮を生じたが,陰部神経支配筋群には明らかな変化は認められなかった.家兎のBCRは上位中枢の影響を受けにくい反射と考えられた.          (平成7年9月26日採用)
著者名
竹中 晋
21
3
139-148
DOI
10.11482/KMJ21(3)139-148.1995.pdf

b_download