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Online edition:ISSN 2758-089X

脂肪/水分離画像MRIスキャンによる神経筋疾患の臨床診断法

神経筋疾患のMRIによる臨床診断法の確立を目的として,骨格筋の脂肪/水分離画像スキャンによる客観的計測を行った.対象は,臨床症状ならびに電気診断によって,神経筋疾患と診断し得た症例15名および転換型ヒステリー症3名である.健康成人33名を比較の対照とした.緩和時間計算画像スキャンならびにDixon法による脂肪/水分離画像スキャンを用いて,両側大腿部骨格筋のMRI冠状断像を撮影した.筋ジストロフィー症では,水画像のpixel値(PV1)の著明な減少と脂肪画像のpixel値(PV2)の著明な増加が認められた. PV 2の増加の程度がPV1の減少の程度を相対的に上回ったことに基づいて,T1緩和時間(T1値)の著明な短縮とT2緩和時間(T2値)の軽度延長の所見が得られたものと推察される.多発性筋炎では, PV 1が増加する点が筋ジストロフィー症と異なる所見であった.疾患の重症度に応じてPV2が増加し,それに準じてT1値が変動した.T2値の延長はPV1の増加に起因するものと考えられる.筋緊張性ジストロフィー症や神経原性疾患では, PV1およびPV2の軽度増加が認められた.神経原性疾患のうち,多発性根神経炎ではT1値およびT2値が延長し,運動ニューロン疾患ではT1値が軽度短縮する傾向が認められた.転換型ヒステリー症は,概ね正常所見を呈した. MRIによる客観的指標の計測は,神経筋疾患の臨床診断において有用であると示唆された.                             (平成7年9月2日採用)
著者名
椿原 彰夫,他
21
3
149-156
DOI
10.11482/KMJ21(3)149-156.1995.pdf

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