h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

肥厚性瘢痕,ケロイドにおけるテネイシンの発現,局在についての検討

肥厚性瘢痕やケロイドの組織内では線維芽細胞が増加し,同時にコラーゲンなどの細胞外マトリックスも増加しており,これらが肥厚性瘢痕やケロイドの形成に関与しているといわれているが詳細は明らかではない.著者は,肥厚性瘢痕やケロイドを形成する創傷治癒過程にテネイシンも関与しているのではないかと考え,本研究では創傷治癒過程での種々の状態である肥厚性瘢痕,ケロイド,成熟瘢痕および正常皮膚におけるテネイシンの発現と局在について,また肥厚性瘢痕由来の線維芽細胞と正常皮膚由来の線維芽細胞の単層培養下におけるテネイシンの発現の有無について免疫組織学的に検討した.その結果は,1)肥厚性瘢痕では真皮においてテネイシンの発現が増加し,またケロイドでも同様に真皮で発現が認められた.2)肥厚性瘢痕とケロイドでは発現の状態からは,両者を鑑別するほどの明らかな差異は認められなかった.3)成熟瘢痕では正常皮膚の真皮と同様にテネイシンの発現は認められなかった.しかし受傷後の経過が短いものでは一部に発現が認められるものもあった.4)肥厚性瘢痕由来線維芽細胞および正常皮膚由来線維芽細胞の培養下では,両方にテネイシンの発現が認められた.以上の結果から,肥厚性瘢痕やケロイドのように線維芽細胞が増加している状態ではテネイシンの産生が増加し,また成熟瘢痕になるとテネイシンの産生が漸次低下すると考えられた.一方,培養下で線維芽細胞を増殖させると,組織中では産生しなかった細胞でもテネイシンを産生することが明らかになった.これらのことから線維芽細胞は活発に増殖する状況下でテネイシンを産生すると考えられ,肥厚性瘢痕やケロイドの形成にテネイシンが関与していることが示唆された.              (平成7年10月13日採用)
著者名
奥本 和生
21
3
175-184
DOI
10.11482/KMJ21(3)175-184.1995.pdf

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