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Online edition:ISSN 2758-089X

DMBA誘発ラット乳癌に対するLeuprolide Acetate と5 '-Deoxy-5-Fluorouridineの併用療法に関する研究

DMBA誘発ラット乳癌に対し,抗エストロゲン剤であるtamoxifen (TAM), LH-RHアゴニストであるleuprolide acetate(TAP),化学療法剤である5 '-deoxy-5-fluorouridine(5'-DFUR)を用い,化学療法と内分泌療法の併用効果について検討した.腫瘍増殖抑制率は, TAPと5'-DFURの併用投与群が73.7%と最も高く,ついでTAP単独投与群の65.7%, TAMと5'-DFURの併用投与群58.0%, TAM単独投与群52.4%,5'-DFUR単独投与群30.0%であった. TAP単独投与群には,初期の治療効果が認められない症例があったにも拘わらず, TAPと5'-DFUR併用投与群では,治療直後より抑制効果がみられ,全例の腫瘍が治療前より縮小し,併用の効果が認められた.Estrogen receptor (ER)とprogesteron receptor (PgR)の治療後の値は,それぞれTAM単独投与群, TAP単独投与群, TAMと5'- DFUR併用投与群, TAPと5'-DFUR併用投与群において,治療前と比して有意に低値を示した(p<0.05).Mitotic indexは治療前と比し, TAM単独投与群, TAP単独投与群, TAMと5'-DFURの併用投与群, TAPと5'-DFURの併用投与群において,治療後は有意に低値を示した(p<0.05).各治療群とも抗腫瘍効果の高いものに細胞の組織学的変化が多く認められた. TAM単独投与群は空胞変性, 5'-DFUR単独投与群は巣状壊死, TAP単独投与群は扁平上皮化生とそれぞれの治療群に特徴的な変化がみられた.TAPと5 '-DFURの併用群の扁平上皮化生の出現頻度はTAP単独群より高く,広範囲に出現する傾向がみられた.本研究の結果から閉経前ER陽性乳癌に対しTAPと5'-DFURを併用した化学・内分泌療法が有用であることが示唆された.(平成6年2月26日採用)
著者名
太田 喜久子
20
2
85-100
DOI
10.11482/KMJ20(2)85-100.1994.pdf

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