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Online edition:ISSN 2758-089X

幼若動物における脳の低酸素,虚血に対する抵抗性に関する実験的研究

乳幼児の脳は低酸素や虚血に対し抵抗性を有すると言われるが,その原因は明らかではない.そこで幼若動物を用い,低酸素および虚血に対する脳の抵抗性とその要因について検討した.方法:マウスを用い低酸素における生存時間,断頭による下顎呼吸の持続時間(gasping movement time : GMT)の測定を行った.また砂ネズミを用い遅発性神経細胞壊死(delayed neuronal death : DND)による海馬CAl細胞の残存率を検討した.更に低酸素下の乳酸,ピルビン酸, LDH, superoxide dismutase (SOD)の測定, GMT,DNDに対する低体温の影響を検討した.結果:1)幼若なほど低酸素や虚血に抵抗性を示した.2)幼若マウスの低酸素負荷,完全脳虚血において抵抗性の消失する時期は,各々3,5週齢で,砂ネズミの一過性脳虚血によるDNDに関しては,6週齡であった.3)低酸素下の乳酸,ピルビン酸, LDHの代謝, SODの反応が成熟,幼若マウスでは,異なっていた.4)低体温によりGMTは,成熟,幼若マウスとも延長した. 5) DNDモデルにおいて低体温により海馬CAl細胞は保護されたが,幼若砂ネズミに特異的ではなかった.考察:幼若動物は,低酸素や虚血に対し抵抗性を有し,要因として低酸素下の脳代謝, SODの反応の違いが関与していると考えられた.低体温は,脳保護効果を示すが,幼若動物に特異的ではなかった.                     (平成6年2月28日採用)
著者名
籠田 仁樹
20
2
101-108
DOI
10.11482/KMJ20(2)101-108.1994.pdf

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