h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

肘関節レベルでの尺骨神経および正中神経刺激による正常人および脳血管障害患者における僧帽筋の誘発筋電図

1.正常人36名,脳血管障害による片麻痺患者10名を対象に,尺骨神経,正中神経の刺激により僧帽筋上部線維から誘発電位を導出した.尺骨神経と正中神経は,肘関節のレベルで,別々に,電流の強さは超最大刺激,刺激の幅は0.1 msecで,心電図のR波をトリガーとしてT波の終了後に刺激が発生するようにdelayを設けて刺激した.誘発電位は表面電極により導出し,50回の連続記録を行った.2.誘発筋電図には,30~40 msec 前後に潜時を持つ波(S波)と60~70 msec前後に潜時を持つ波(L波)の二つの波が区別できた.3.正常人では,刺激と同側僧帽筋からの出現率(全被検者の刺激総数に対する出現総数の比率)は,尺骨神経刺激のS波0.45, L波0.32,正中神経刺激のS波0.12, L波0.07,刺激と反対側僧帽筋からの出現率は,尺骨神経刺激のS波0.01, L波0.001 ,正中神経刺激のS波0.02, L波0であった.一方,片麻痺患者では,刺激と同側僧帽筋からの出現率は,非麻痺側尺骨神経刺激のS波0.86, L波0.80,麻痺側尺骨神経刺激のS波0.52, L波0.40,非麻痺側正中神経刺激のS波0.81, L波0.67,麻痺側正中神経刺激のS波0.63, L波0.42,刺激と反対側僧帽筋からの出現率は,非麻痺側尺骨神経刺激のS波0.62, L波0.62,麻痺側尺骨神経刺激のS波0,33, L波0.27,非麻痺側正中神経刺激のS波0.49, L波0.51,麻痺側正中神経刺激のS波0.36, L波0.41で,正常人より出現率が高かった.4.正常人で,刺激と同側僧帽筋から得られた電位の平均振幅は,尺骨神経刺激のS波63.7±55.9μV (n=813), L波66.1±56.1μV (n=569),正中神経刺激のS波68.6±77.8μV (n=223), L波35.1±20.5μV (n=130)であった.一方,片麻痺患者では,刺激と同側僧帽筋から得られた電位の平均振幅は,非麻痺側尺骨神経刺激のS波335.3±354.5μV(n=43l), L波158.1±163.8μV(n=400),非麻痺側正中神経刺激のS波255.5±244.4μV (n=404), L波227.8±169.9μV (n=336)で,正常人より振幅が大きかった.5.正常人で,安静時の尺骨神経刺激の場合と手指外転筋随意収縮時の尺骨神経刺激の場合を比較すると,手指外転筋随意収縮時にL波の出現率が高くなった.6.この誘発筋電図の経路,機序の詳細は不明であるが,S波は spino-bulbo-spinal reflex, L波は大脳皮質を経由するlong-loop reflex と考える.(平成6年6月13日採用)
著者名
井上 桂子
20
3
183-201
DOI
10.11482/KMJ20(3)183-201.1994.pdf

b_download