h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

経皮的吸引針生検組織を用いた肝細胞癌の悪性度判定に関する検討

肝細胞癌(HCC)における組織学的分化度と生物学的悪性度の比較・検討と,さらに内科的治療例に対する予後判定の指標を得る目的で,種々の組織学的マーカー染色を経皮的吸引針生検組織を用いて検討した.マーカー検索は, Ki-67, PCNA(proliferating cell nuclear antigen)およびp53の免疫染色と, AgNORs(argyrophilic nucleolar organizer regions)染色を行った.材料は肝細胞癌60症例68腫瘤から経皮的吸引針生検によって得られたHCC組織の10%ホルマリン固定,パラフィン包埋組織標本を用いた.免疫染色ではそれぞれのLabeling Index (LI)を求め, AgNORsでは, Type l(核小体そのものを表す), Type 2 (Type l内の辺縁部にsmall black dot が集まったもの), Type 3 (核小体にcluster状に集簇したdot),とType 4((核小体外に孤立性に散在するdot)に分類し,Type 2~4の細胞100個あたりのcount数を計測して検討した.疾病対照としては肝硬変(LC, 25例),慢性持続性肝炎(CPH, 11例)を用いた.HCCのEdmondsonグレード(以下Ed)I~Ⅲの各グループ間での上記各マーカーの染色結果は, Ki-67, p53, AgNORs Type 3および4ではEdの上昇すなHCC細胞の分化度の低下にしたがってそれぞれの平均計測値が増大したので, HCCにおける脱分化と増殖能の増大ないし遺伝子変異との関連性が示唆された. PCNAはCPHで有意に低値であったが,LCとHCCの各組織型間の相関はみられなかった. AgNORs Type 2 はLCでもっとも高値で,HCCではEd l~Ⅲにしたがって漸減したので,今回の検索材料においては,それは細胞の脱分化に逆相関することが示唆された.肝動脈塞栓療法十経皮的エタノール局注療法を受けHCC症例のうち,単発性で境界明瞭な3cm径以下のEdl病変について,治療後1年以内の再発の有(n=13),無(n=15)により2群に分け,各種マーカーの染色性を比較すると, Ki-67, p53, AgNORs Type 3および4の平均計測値が統計的には有意差はなかったが,再発群でそれぞれ高値であった.また,これらのマーカーで非常に高い計測値を示すものはほとんど再発群に属していた.これらマーカー染色性による両群判別の意義を検討すると, p53染色性が両群を分けるのに有意な要素であった.                      (平成6年10月20日採用)
著者名
仙石 宣彦
20
4
253-266
DOI
10.11482/KMJ20(4)253-266.1994.pdf

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