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Online edition:ISSN 2758-089X

大腸がん検診の疫学的評価に関する研究一発見大腸がんの性状からみた検診の有効性の検討一

わが国では大腸がん死亡率の増加により1992年から大腸がん検診が国の施策としても実施されるに至っている.しかしながら免疫便潜血検査をスクリーニング検査とした大腸がん検診の有効性は充分な評価がなされていない.そこでこの検診の有効性を疫学的な立場からretrospectiveな観察的手法を用いて検討した. 1989年から1993年までにわれわれの大学病院において手術された大腸がん症例をもとに検診発見がん(検診群:61例)と外来発見がん(外来群:234例)に分け,大腸がんの性状および生存率を比較した.性別および年齢構成は両群に差はなかった.検診群では10 mm 以上mm未満の比較的小型のがんが27例(44.3%)と多かった.肉眼型分類では2型が33例(54.1%)で最も多く次いで0型(早期がん)が19例(31.2%)であった.進行度別ではDukes Aが28例(45.9%)で最も多かった.一方外来群では50mm以上の大型のがんが116例(49.6%)と多かった.肉眼型分類は2型が155例(66.2%)で最も多く0型は33例(14.1%)であった.進行度別ではDukes Cが105例(44.9%)であった.組織型は両群とも中・高分化型腺がんが多く有意差はなかった.次に累積生存率を比較すると5年生存率は検診群が88.9%,外来群が58.8%であり統計学的に有意差を認めた.以上発見がんの性状および生存率の検討からより早期で予後の良いがんが発見されており,免疫便潜血検査をスクリーニング法とした大腸がん検診の効果が示された.(平成6年10月26日採用)
著者名
日隈 慎一
20
4
267-276
DOI
10.11482/KMJ20(4)267-276.1994.pdf

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