Online edition:ISSN 2758-089X
甲状腺癌をめぐる2つの組織学的問題点
甲状腺癌は不思議なことに組織によって全く性質が異なる.分化癌の予後は極めて良好であるが,これに反し,末分化癌の予後は極端に悪く,治癒することは稀である.我々の教室では1975年の開設以来現在までに448例の甲状腺癌手術症例を経験した.これらの症例を詳細に検討していくうちに,2,3の点について,現在病理学的常識と考えられている点について,疑問を持つに至ったのでその点について論じてみたい.1.乳頭癌と濾胞癌の組織学的分類は臨床的に有意義か?日本甲状腺外科検討会案の分類によると臨床的事実と一致せず有意義とは云えぬ.2.甲状腺の扁平上皮癌は稀な癌か?剖検例を検討すると28.4%に見られ,決して稀な存在とは云えない.むしろ,未分化癌とともに乳頭癌が長期の経過たどった際の自然な過程の1つとも云える. (平成6年6月11日採用)
- 著者名
- 原田 種一,他
- 巻
- 20
- 号
- S
- 頁
- 25-29
- DOI
- 10.11482/KMJ20(S)25-29.1994.pdf