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Online edition:ISSN 2758-089X

マクロファージ活性と癌線維化の病理-シアニン系感光色素ルミンによる光化学的癌免疫療法一

化学構造式の明らかな増感剤でシアニン系ペンタチメン三核型感光色素であるルミンのマクロファージ(mφ)活性作用に着目し, BRMによる癌瘢痕化の実験を試みた.ルミンについては,古くから難治性潰瘍,創傷治癒の促進作用が知られているが,ルミンはB-細胞,T-細胞を介するmφの活性を促進することが分かり, BRMによる各種培養癌細胞をヌードマウスに移植して癌免疫療法の病理学的研究を行った.Xenografts, allograftsを作成し,ルミン50 ng/mouse 皮下注射と電気メスによる創傷治癒機転の誘発と共に光照射を行い,ルミンの活性を励起した.その結果,リンパ球増殖とmφ活性により癌巣をとりまく著明な線維芽細胞の増殖に次いで線維化がみられ癌は瘢痕化へと進行した.他方,肝癌治療,胃癌治療としてエタノールの癌巣内注射が行われているが,エタノールにエタノール可溶性のルミンを加え癌の凝固壊死を起こし,ルミン飲料を長期続けるとmφ活性とリンパ球増殖が起こり癌巣の瘢痕化が促進した.従来,免疫療法は免疫細胞よりのサイトカインによる殺癌細胞を目的としたものであるが,免疫細胞の活性化の恒常性を長期間維持することにより, BRMによる癌間質の線維芽細胞を増殖し, collagen増殖による癌封じ込め,転移を抑制し,さらに癌浸潤による組織傷害巣の修復を促し,終局的には非特異的な癌瘢痕化を起こし癌免疫療法として重視すべきものと考える.                      (平成6年2月10日採用)
著者名
木本 哲夫
20
S
91-109
DOI
10.11482/KMJ20(S)91-109.1994.pdf

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