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Online edition:ISSN 2758-089X

三塩化エチレンの慢性暴露者に認められた大腸型腸管嚢腫様気腫症の1例一特に気腫内,血中,尿中,胆汁中の三塩化エチレン並びにその代謝産物についてー

腸管嚢腫様気腫症は,腸管壁内に多発性にガスの貯留した気腫が生じる比較的稀な疾患である.近年,三塩化エチレン慢性暴露が大腸嚢腫様気腫の発生に関与するという報告がある.著者らはその1例を経験し気腫内,血液,尿,胆汁中の三塩化エチレン及びその代謝産物についてマススペクトル分析を行った.症例は23歳男性,5年間の三塩化エチレン暴露歴のある旋盤工.3ヵ月前より便秘傾向となり下剤服用するも改善せず,注腸X線検査にて大腸嚢腫様気腫を認め入院となった.大腸内視鏡所見は直腸,S状結腸,下行結腸と上行結腸の一部に3~25 mm, 半球状で軟らかい隆起を多数認め,粘膜面に発赤,びらんを認めた.気腫と判断し,気腫内ガスを内視鏡下に採取しマススペクトル分析を行うと共に,血液,尿,胆汁の分析も行った.治療は50%酸素をベンチュリーマスクにて5l/分,1日5時間10日間吸入し,気腫は消失した.分析結果は,気腫内には1.51~3.16 ng/ml の三塩化エチレンを,尿中,血中,胆汁中よりそれぞれ最高12.2, 7.0, 1.9μg/mlのトリクロロ酢酸を検出した.(平成5年8月18日採用)
著者名
鴨井 隆一,他
19
3
221-228
DOI
10.11482/KMJ19(3)221-228.1993

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