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Online edition:ISSN 2758-089X

ARDS(成人呼吸促迫症候群)を呈しステロイドパルス療法が有効であったマイコプラズマ肺炎の1症例

マイコプラズマは若年成人における呼吸器感染症の病原菌としてよくみられ,通常軽症ないし中等症の感染を引き起こす.稀ではあるが,時に急性呼吸不全を伴う重症肺炎を引き起こすことがある.症例は40歳女性で乾性咳嗽・発熱を主訴に近医を受診.急性上気道炎の診断で経口抗菌剤にて治療された.3日間の治療にも拘らず症状はさらに増悪し,胸部レ線上肺炎像が認められたため入院の上セファロスポリン系の薬剤を点滴静注された.5日間の加療にも拘らず呼吸不全が進行したため当科へ紹介入院となった.クラミジア・マイコプラズマ・レジオネラ肺炎等を疑いエリスロマイシン(3日目よりミノマイシンに変更)にて加療開始し, ARDSに対してステロイドによるパルス療法と人工呼吸器による呼吸管理を行った.以上の様な加療により良好な経過を得,マイコプラズマ抗体価の上昇により確定診断を得た.肺局所における細胞性免疫過敏状態が惹起される事がマイコプラズマ肺炎の重症化の機序と考えられており,それにより全身的には細胞性免疫低下状態が生じると考えられ,本症例でツベルクリン反応が陰性であったことはそれを支持するものと考えられた.(平成4年3月18日採用)
著者名
橋口 浩二,他
18
2
123-129
DOI
10.11482/KMJ18(2)123-129.1992.pdf

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