Online edition:ISSN 2758-089X
骨髄異形成症候群(myelodysplas tic syndrome)における末梢血赤血球膜病態に関する研究一特に末梢血赤血球形態異常についてー
骨髄異形成症候群(myelody splast ic syndrome, MDS) 32例における赤血球膜病態の検索を末梢血赤血球形態を中心に検討した.MDS症例では,正常対照群に比して,形態異常を示す赤血球(abnormal red cells)が有意な増加を認めた(p<0.01).形態異常の分類は楕円赤血球型(elliptocytosis type),有口赤血球型(stomatocytosis type),奇形赤血球型(poikilocytosis type)の3種類に分類され,多くの症例はこの3者が混合して認められた.MDS 5病型間では, RARS (34.0±11.05%), RAEB (29.4±14.1%), RA (23.7±14.9%)にてabnormal red cellsの有意な増加を認めた(P<0.001).この赤血球形態異常と骨髄での赤芽球のdysplasia,末梢血赤血球数との間には各々有意な相関は認められなかった.赤血球膜病態を検索する上で赤血球膜輸送能,赤血球膜脂質,赤血球膜蛋白について検討した. Na-influx, Na-effluxはともに有意な亢進を示し(P<0.001),赤血球膜脂質に関しては, free cholesterolの増加(pく0.01),リン脂質分画ではphosphatidylethanolamineの低下(p< 0.01), lyso-phosphatidylcholineの低下(p< 0.001)を認めた.また, RAEB1症例にて赤血球膜蛋白band 4.1の部分欠損が認められた(38%欠損).この症例では,elliptocytosisが著明に認められた.MDSにおいては,末梢血赤血球形態異常が高頻度に認められ得ることが判明したが,その病因については,多くの因子が関与している可能性が示唆された.(平成3年2月28日採用)
- 著者名
- 阿多 雄之
- 巻
- 17
- 号
- 1
- 頁
- 25-36
- DOI
- 10.11482/KMJ17(1)25-36.1991.pdf