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Online edition:ISSN 2758-089X

パイエル板M細胞(microfold cell)におけるSalmonella enteritidisの取り込みに関する形態学的研究

パイエル板リンパ濾胞上皮上に存在するM細胞は,腸管腔内の抗原性物質を選択的に取り込み,内包したリンパ球及びマクロファージに伝達するという抗原提示細胞としての機能があり,現在までに種々の細菌のM細胞からの取り込みが確認されている.一方, Salmonella enteritidisはヒト食中毒の起因菌として一般的な腸内細菌であるが,その侵入様式は明らかにされていない.そこで,著者は,家兎においてパイエル板を含めた回腸結紮ループ内にSalmonella enteritidis GIFU 3161 (ATCC 13076)を投与して蛍光抗体間接法並びに電子顕微鏡的観察を行った.また, 0.5%ホルマリン処理死菌の投与も行った.その結果,生菌は投与後90分で既にM細胞に付着,取り込まれ,180分後では内包したリンパ球やマクロファージに受け渡されている像が確認された.一方,絨毛上皮並びに濾胞上皮上の吸収上皮細胞からは取り込まれなかった.死菌投与においては,6時間後でもいかなる細胞からも取り込みを認めなかった.また,死菌による感作実験として経口投与と経静脈投与の方法で行ったが,経静脈投与では640倍の凝集価の上昇を認めたのに対し,経口投与では8倍であった.経静脈感作した家兎における生菌の回腸結紮ループ内投与実験では,未感作家兎に比べてM細胞への付着の低下を認めた.                              (平成3年9月13日採用)
著者名
鴨井 隆一
17
3
225-235
DOI
10.11482/KMJ17(3)225-235.1991.pdf

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