最近10年間の川崎医科大学の研究業績の量はコンスタントに維持もしくは微増しているが,研究のアウトカムに匹敵する質の評価についてはこれまで明確に示されてこなかった.今回,学術研究論文の引用に基づいた研究業績の質評価を試み,日本国内の類似の規模の医学部をもつ大学の間で比較を行った.Web of Science, SCOPUS, Google Scholar などのデータベースとその解析を利用して過去5.10年間の研究業績を分析すると,SCOPUS に収載されている出版数で見たときの国内ランキングが121位であるのに対し,引用頻度の高い論文の比率を示す“卓越指数”では53位である.Web of Science で機関毎に集計した国内医科大学での比較では,過去10年間(2002年.2011年)のh-index は54であり,27校中19位となり,5年前に行った類似の分析結果(27位)に比べて順位は上がっている.本学に所属する個々の研究者についての個別分析では,研究分野による差は見られるが,全体的に質の高い研究が行われていることが分かる.このような客観的指標を用いた研究業績の質評価は医学・生命科学研究の指向や施策に今後大きく影響する可能性があり,計量書誌学的な引用度に基づく指標を用いた研究の質評価には注目して行かなければならない.(平成24年4月4日受理)
著者名
濃野 勉,他
巻
38
号
3
頁
83-96
DOI
10.11482/KMJ-J38(3)083
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