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Online edition:ISSN 2758-089X

肝転移を伴う胆嚢腺内分泌細胞癌の一例

症例は50歳代,女性.20XX 年1月ごろより前屈での心窩部付近の疼痛と右季肋部違和感を認めていた.同年3月初旬に疼痛が増強したため近医を受診し,CT で胆嚢に造影効果のある腫瘤と肝内の腫瘤陰影が認められた.肝転移を伴う胆嚢癌が疑われ,精査加療目的に当院へ紹介された.当院での画像検査でも胆嚢底部から体部にかけて約4.5 cm 大の隆起性病変を認めた.胆嚢底部では漿膜面が腫瘤に引き込まれ陥入している像を認め,肝床と一部で接しており境界不明瞭ではあったが,肝実質内への浸潤像は認めなかった.肝S4に約2 cm 大のリング状に造影される腫瘤を認め,肝転移が疑われた.ERCP では胆嚢頸部,胆嚢管,総胆管への浸潤は認めなかった.胆汁細胞診はClass V であった.単発の肝転移以外には遠隔転移を認めず,主要血管への浸潤も認めないため肝S4a+5切除,胆嚢摘出術,リンパ節郭清を施行した.切除標本では,病変は約4.5 cm 大の乳頭・結節型であり漿膜外まで浸潤していた(T3).組織学的には腺管構造を呈する腺癌とシナプトフィジン, クロモグラニンA が陽性の内分泌細胞癌が混在していた.肝転移巣は約2 cm の結節・浸潤型であり,組織学的には同様にCD56強陽性, シナプトフィジン, クロモグラニンA 陽性となる内分泌細胞癌が認められた(M1).リンパ節転移は認めなかった(N0).病理診断は腺内分泌細胞癌,UICC Stage-IVB であった.本症例は孤立性の肝転移を伴った胆嚢癌であったが,肝転移がS4であり,通常の胆嚢癌手術の切除範囲内であり,大きなリスクもなかったため,切除手術を行った.術後,gemcitabine とcisplatin による補助化学療法を行った.doi:10.11482/KMJ-J40(2)145 (平成26年9月13日受理)
著者名
石田 尚正,他
40
2
145-151
DOI
10.11482/KMJ-J40(2)145

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