h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

t_toukou

Cis-diamminedichloroplatinumの聴器毒性とその軽減法に関する実験的研究

cis-diamminedichloroplatinum (cisplatin, CDDP)は,プラチナ原子を中心に塩素とアミンがシス位に相対している白金製剤で,泌尿器,産婦人科だけでなくすべての領域の悪性腫瘍に対し欠くことのできない抗癌剤として広く使用されている.CDDPの毒性は多彩で, dose limiting factor となる腎障害を始め,胃腸,骨髄,聴器等への副作用を有する.この報告では,ゴールデンハムスターとニホンザルを用いて, CDDPの聴器毒性の様式と程度について聴性脳幹反応(ABR)と走査電子顕微鏡(SEM)で検討した.聴力は,ABRにおいて闘値の上昇と潜時の延長が認められ,一過性の聴力低下を来すものもあった.形態的な障害は,外有毛細胞が中心であり,内有毛細胞に障害を認めなかった.外有毛細胞障害は,散在性で基底回転に強く,投与量,投与回数の増加にともない激しくなった.CDDPの毒性を軽減するものとしてsodium thiosulfate, fosfomycin等があるが,この報告では,次硝酸ビスマス(bismuth subnitrate : BSN)の投与によって誘導される金属結合蛋白質( metallo thionein : MT)が, CDDPの腎毒性を軽減するということから,MTの聴器毒性に対する効果をゴールデンハムスターを用いて検討した.また,肝,腎におけるMTをCadmium-Hemolysate法(簡易定量法)によりCdの値として,間接的に測定した.BSNの投与により, CDDPの聴器毒性が軽くなり,また肝,腎におけるMTの増加が認められた. CDDPの毒性は,MTにより軽減されたと考えられたが,聴器毒性の軽減が,MTの直接作用か,腎毒性の軽減により二次的に起こったものなのかさらに検討が必要と思われた.                         (平成2年2月26日採用)
著者名
河田 信
16
1
47-65
DOI
10.11482/KMJ-J16(1)47

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