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Online edition:ISSN 2758-089X

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全脳虚血後の脳および髄液の酸塩基平衡障害に対するジクロル酢酸の効果

雑種成犬にAortic occlusion balloon catheter (A-O-B)法による全脳虚血(total cerebral ischemia : TCI)を作成し,血流再開後にみられる動脈血,脳,髄液(cerebrospinal fluid : CSF)のアシドーシスに対するジクロル酢酸(dichloroacetate : DCA)の効果を検討し,以下の結果を得た.1.動脈血ではTCIによりpHの低下, PaC02の上昇がみられたが,DCA投与によって動脈血中乳酸値は低値に維持され,pHも回復傾向を示したが120分間では虚血前値には戻らなかった.これはpHの低下に乳酸以外の代謝性因子も関与しているためと思われた.2.脳ではTCIによりでpHの低下, PC02の上昇が認められたが血流再開後はDCA投与群と非投与群に差を認めず,虚血前値に回復した.これは脳のpH, PC02の変化に対して脳血流が影響を及ぼしているためと考えられた.3.髄液もTCIによりpHの低下,PC02の上昇がみられた. DCA投与群では髄液中乳酸値も低値でpHも徐々に回復したが,非投与群ではpHの低値が持続した.血流再開後のPC02の変化は両群で差を認めなかった.以上の結果より, DCAはTCI後の血液,髄液の乳酸アシドーシスに対しては有効であることがわかった.今後はこれらの治療薬剤の中枢神経機能に与える影響についても検討する必要があると思われた.                   (平成2年2月28日採用)
著者名
石松 伸一
16
1
75-83
DOI
10.11482/KMJ-J16(1)75

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