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Online edition:ISSN 2758-089X

摘出虹彩毛様体の短絡電流に対するプロスタグランジンF2αおよびD2の効果

プロスタグランジンFαとD2は,房水産生の抑制あるいは房水流出の促進によって眼圧を下降させる.摘出家兎虹彩毛様体のshort-circuit current (SCC)を測定してプロスタグランジン群(PGs)の効果を調べた. Tyrode液を満たしたUssing型液槽に虹彩毛様体を装着した. Tyrode液は95 % O2+ 5 % CO2混合ガスにて通気され,液槽のまわりに温水を循環させて液温を一定に保った.測定には4本のカロメル電極を用い,そのうち2本は経上皮電位差を測定のために,他の2本は電位差を打ち消すために必要な電流を通じるために供した.1×10-5 M のouabainは実質側に与えられるとSCCを減少させるが,房水側に与えられるとSCCを増加した. DBcAMPは房水側実質側のいずれに与えられてもSCCを増加した.1×10-5 M PGF2αを房水側に投与するとSCCの約30%増加が認められたけれどもこの濃度は生理的レベルよりもはるかに高い.また,その変化の時間経過はouabainよりも緩徐で1時間以上もかかって安定した.一方, PGF2αを実質側に投与してもSCCの増加はわずかであった。PGD2を房水側に投与するとSCCを増加させたが,PGF2αに比して弱かった.PGD2を実質側に投与してもSCCに明らかな変化を認めなかった. PGF2αとPGD2のSCCに対する効果は特に房水側に投与したときは,両方とも効果的で,量的な違いによるものかもしれない。PGsは,細胞内cAMPを上昇させ細胞の機能を活性化させることが知られている. PGsを房水側に投与することによるSCCの増加は,房水側に面した無色素上皮層のcAMPを上昇させ,結果として,Na+-K+ポンプを抑制していると説明できる.しかしながら,実質側におけるPGsの効果は,単にNa+-K+ポンプだけの作用によるとは説明できない. PGsはNa+-HCO3-共輸送体あるいはCI-ポンプのようなanion transport を促進してSCCを増加させている可能性も残されている.                   (平成2年2月28日採用)
著者名
亀田 泰
16
1
84-92
DOI
10.11482/KMJ-J16(1)84

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