h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

ウシガエルの動脈圧受容器刺激によるリンパ心臓拍動抑制反射とその経路

ウレタン麻酔,あるいは除脳したウシガエルの動脈圧受容器からリンパ心臓への反射について研究した.その結果は次のようである.1.頸動脈洞,大動脈および肺皮動脈を含む右側の動脈を伸展することにより,すべてのリンパ心臓の拍動が抑制された.この抑制反射は視葉の直尾側で脳幹を横断した後には発現しやすくなった.2.舌咽迷走神経の切断により,この抑制反射は消失したが,頸静脈神経節に入る交感神経を切断しても,この反射は残存した.3.この抑制反射は洞神経,あるいは喉頭神経の肺皮動脈枝の片方のみの切断によっては消失しなかったが,両神経を切断すると消失した.4.洞神経と喉頭神経の切断中枢端の電気刺激によって,リンパ心臓の拍動は抑制された.5.迷走神経の延髄への侵入部上縁の高さで延髄を横断しても,この反射は障害されなかった.閂の吻側1~3mmにわたり延髄正中線に沿う縦断を行うと,刺激とは反対側のリンパ心臓に対する抑制効果は消失した.閂の高さで延髄の半側を横切すると,切断側のリンパ心臓に対する抑制効果が消失した.以上の実験結果より,動脈圧受容器からの求心性活動は,洞神経と喉頭神経肺皮動脈枝,次いで舌咽迷走神経を通って延髄に入り,尾側延髄に存在する抑制性の神経要素を活動させると結論される.また,両側の反射中枢からの下行路は脊髄では交叉しない.                             (平成2年3月9日採用)
著者名
山根 正信
16
1
93-100
DOI
10.11482/KMJ-J16(1)93

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