Online edition:ISSN 2758-089X
幽門狭窄をきたしたクローン病の1例
症例は20歳の男子大学生.昭和62年5月頃より心窩部痛を訴え近医で胃X線検査を受け,十二指腸潰瘍を指摘された.7月下旬より粘血便があり注腸造影検査,大腸内視鏡検査にて小腸クローン病と診断され, salazosulfapyridine (以下SASP)の投与を受けていた.8月下旬より嘔気,嘔吐が出現し,10月初旬の胃X線検査,胃内視鏡検査で,幽門前部の結節状,敷石像様病変による狭窄を認めた.胃生検では非乾酪性肉芽腫を見いだせなかったが,X線,内視鏡所見より胃十二指腸クローン病変と診断した.高カロリー輸液などの保存的治療を行ったが軽快せず,胃切除術(Billroth Ⅱ法)を施行した.文献的に胃十二指腸クーロン病変の本邦報告例は自験例を含め14例で,うち11例が外科的治療を受けていた.クローン病の胃十二指腸病変は小潰瘍,びらんなど微小なものが多く,本例のような高度の狭窄症状を来す例は極めてまれである. (平成2年4月11日採用)
- 著者名
- 光野 正人,他
- 巻
- 16
- 号
- 1
- 頁
- 107-115
- DOI
- 10.11482/KMJ-J16(1)107