Online edition:ISSN 2758-089X
アスベスト(クリソタイル)線維によるリンパ球への影響(Ⅰ)PHA (phytohaemagglutinin)のリンパ球幼若化に及ぼす影響
アスベスト線維曝露は,胸膜中皮腫,肺線維症,肺癌の発生と関連があるとされている.さらに自己抗体の出現,高グロブリン血症などの発生が報告されている.アスベスト線維はPHA (phytohaemagglutinin)のリンパ球幼若化を抑制すると報告されている.我々はこのPHA幼若化抑制の機序解明のために,アスベスト(クリソタイル)線維による3H-thymidineの取り込み,リンパ球増殖因子の指標であるIL-2 receptor (IL-2R)およびPHAのリンパ球結合について調べた. PHA刺激によるリンパ球の3H-thymidineの取り込みおよびIL-2Rはクリソタイル線維(50μg/ml)によって抑制された.クリソタイル線維によるIL-2Rの抑制はPHA幼若化抑制と関係があると思われた.PHAとリンパ球の結合強度はむしろ増強し, PHAとリンパ球との結合障害によるものではないことが判明した. さらにリンパ球サブセットへの影響についてフローサイトメトリーを用いて解析した.その結果,クリソタイル線維負荷によりCD4+細胞は12時間までに減少しその後回復したことから, CD4+細胞が選択的に刺激されていると思われた. (平成2年5月31日採用)
- 著者名
- 絹川 敬吾
- 巻
- 16
- 号
- 2
- 頁
- 166-171
- DOI
- 10.11482/KMJ-J16(2)166