Online edition:ISSN 2758-089X
超音波下細径針生検肝細胞癌組織の電顕的観察-再生結節および腺腫様過形成との比較-
肝細胞癌(HCC)が疑われた肝硬変患者に超音波下細径針肝組織生検を施行し,37例より採取された再生結節(RN),腺腫様過形成(AH), HCCの組織を電顕的に観察してHCCの診断に関する臨床病理学的検討を行った. lateral surface (LS)の微絨毛突起は, RNでは増生し, AH, HCCでは減少する傾向があった.LSにおける細胞間隙(ICS)の幅と面積を計測すると, RN, AH, HCCの順で幅,面積ともに有意な狭小化を示した. Edmondson分類のGrade- I ~II型のHCC群とIIおよびIII型群を比較すると面積に差はなかったが,幅はIIおよびIII型群で有意に減少していた.超音波検査で被膜所見を有するHCCでは,なかった例より幅,面積ともに有意な狭小化を示した. ICSの狭小化は,周囲細胞組織を圧排しながら増殖するHCCの膨脹性発育と被膜の存在に関連していると推察された. RNとAHの鑑別診断あるいは高分化型HCCの診断には, ICSの狭小化が重要な所見と考えられた. (平成2年10月26日採用)
- 著者名
- 末宗 康宏
- 巻
- 16
- 号
- 3.4
- 頁
- 235-247
- DOI
- 10.11482/KMJ-J16(3.4)235