h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

内視鏡的食道静脈瘤硬化療法後の長期生存例の臨床的および病理学的検討

5% ethanolamine oleate (EO)による内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)を行った68例のうち, EIS後3年以上生存した11例を対象とした.EISの施行は緊急例2例,待期例3例,予防例6例であった.基礎疾患は全例肝癌非合併肝硬変で, Child分類ではChild A 3例, Child B 8例で, Child Cの症例は認められなかった.11症例中9例は,1~3回の血管内注入法によるEISで,静脈瘤は完全消失し,3年以上再発を認めなかった.9例中2例が死亡し,肝不全死であった.剖検できた1例で,組織学的に静脈瘤は完全に器質化されていた.11症例中2症例は,血管内注入法によるEISで,静脈瘤は完全消失したが,その後atypical red-color signを示す静脈瘤の再発を認め,主に粘膜下注入法によるEISを4~7回繰り返し,3年以上静脈瘤出血死が防止できた.うち1例が死亡し肝不全死であった.組織学的には粘膜下層の高度の線維化を認め,静脈瘤は器質化していた.しかし粘膜固有層の静脈は一部拡張し,器質化は認められなかった.これは内視鏡所見のatypical red-colorsignに相当すると考えられた.以上より次の結論を得た.1)血管内注入ですべての静脈瘤の器質化が得られれば長期生存が可能であると考えられた.2) EIS後の再発例に対しては,繰り返しEISを行うことにより長期生存が可能であると考えられた.                       (平成2年12月26日採用)
著者名
和田 明,他
16
3.4
256-263
DOI
10.11482/KMJ-J16(3.4)256

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