h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

Passive Arthus Reaction における抗原と抗体の持続性とImmune Complex 形成への影響

抗原と抗体の免疫学的活性の持続時間を, passive Arthus reactionによるモルモットの皮膚組織内でのimmune complex (IC)形成の有無を観察することによって検討した.passive Arthus reaction は,皮膚内の抗原と血中の抗体によって惹起され,その結果,真皮の毛細血管や細静脈の血管壁およびdermo-epidermal junction(D-EJ)への抗原・抗体・補体の顆粒状の沈着物としてICの形成が認められる.抗原はhorseradishperoxidase (HRP)とbovine serum albumin (BSA)を,抗体は抗HRPウサギIgGと抗BSAウサギIgGを用いた.抗原であるHRPの沈着は, Graham-Karnovsky法によるdiaminobenzidine発色反応で,抗体であるウサギIgGと,補体であるモルモットC3の沈着は螢光抗体法により証明した.第1の実験の目的は,皮膚組織内における抗原の免疫学的活性の持続性を調べることである. 100μgの抗原を足底部皮内に投与した後,一定の時間間隔(15分間,1時間,2時間,4時間,6時間)をおいて5mgの抗体を静注した.この静注により反応を惹起した1時間後に,抗原を皮内注射した部位の皮膚を採取し,ICの形成の有無を調べた.ICが形成されていれば,抗体が静注された時点に,この抗体と反応してICを形成することのできる抗原が皮膚に存在していたことを示している.第2の実験の目的は,血中における抗体の免疫学的活性の持続性を調べることである.5mgの抗体を静注した後,一定の時間間隔(15分間,1時間,2時間,4時間)をおいて100μgの抗原を皮内注射した.反応を惹起した抗原の皮内注射の各1時間後に,皮膚生検を行った.ICが形成されていれば,抗原を投与した時点に,この抗原と反応してICを形成できる抗体が血中に存在していたことを示している.第1の実験の結果で, 100 μg のHRPを皮内注射した後,2時間後に5mgの抗体を投与すればICの形成が観察されたが,4時間後に抗体を投与した場合にはICはほとんど認められなかった.これに対して, BSAを抗原とした場合には, 100μgの抗原を皮内注射した後,6時間後に5mgの抗体を静注した場合でもICの形成が観察された.第2の実験の結果,静注された5mgの抗HRPウサギIgGと抗BSAウサギIgGは,いずれも2時間後に投与された抗原(HRPまたはBSA)とは反応してICを形成することができたが,4時間後ではICは形成されず,持続時間に差はなかった.以前の実験結果より,5mgの抗体を投与する場合, 100μgか25μgの抗原(HRPまたはBSA)を投与すれば確実にICが形成され,5μgでは多くの場合,1μgではときにICの形成が観察されることがわかっている.したがって,今回の実験で皮内に投与された100μgの抗原は, HRPの場合は,2~4時間後に5~1μgあるいはそれ以下に減少し,BSAの場合は6時間後でも5μg以上残存していたと考えられる.すなわち, BSAはHRPより長く皮膚内で抗原として作用することができると考えられた.今回のHRPの持続性についての実験結果は,益田らにより125I標識耳HRPを用いて計測されたHRPの皮膚内存続時間の結果とは差があった.この差は,放射活性により示されるHRPの存在が,ICを形成することのできる抗原として活性のあるHRPの存在と一致しないことを示していると考えた.すなわち125I標識HRPによる計測では,抗原活性の有無には関係なく,物質としてのHRPの存在する時間を計測することになるが,貪食や分解等によって不活性化されたHRPは抗原となることはできない.また,このことより, HRPとBSAの持続時間の差も,これらが活性を失う速度の違いによる可能性があると思われた.したがって,ICの形成に対する影響を考える場合,抗原や抗体が存在することはもちろんであるが,抗原・抗体としての活性をもっていることが必要であり,これらの活性の持続性が重要であると思われる.(昭和63年10月24日採用)
著者名
和田 民子
15
1
42-51
DOI
10.11482/KMJ-J15(1)42

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