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Online edition:ISSN 2758-089X

当科における乳癌症例の術前病理診断の検討

 乳房の病変に対する病理学的診断には穿刺吸引細胞診(FNAC)や,針生検(CNB)などの方法が用いられるが,FNAC はときに鑑別困難や検体不適正を生じ,診断に至らない症例が存在することが指摘されている.そのため,近年では低侵襲で組織学的情報が得られるCNB を最初から行う症例が増加しているが,組織型の推定や浸潤の有無の判断など,病変の一部分からなる診断であることに起因する問題もある. 今回,2010年1月から2010年12月の1年間に,当科で術前療法を行わずに手術を施行した原発性乳癌症例180例を対象として,FNAC およびCNB のそれぞれの検査法の精度を検討した. 術前にFNAC が施行された症例は59例で,「悪性」と判定された症例は39例,「悪性の疑い」7例,「鑑別困難」7例,「正常あるいは良性」4例,「検体不適正」2例であった.感度は66.1%で,非浸潤性乳管癌や腫瘍径の小さな乳頭腺管癌,硬癌がFNAC で診断されにくいことが示された. 術前にCNB が施行された症例は138例で,浸潤性乳管癌や特殊型はCNB 結果と最終病理診断の一致率が高い.しかし,CNB で非浸潤性乳管癌と診断された症例は62.1%が最終的に浸潤癌であった.また,CNB でのホルモン感受性の検索では最終病理診断との間に高い相関性を認め,癌の全体像を反映していると考えられた.HER-2過剰発現については,CNB 検体でのHercep testがscore3+ の症例では75%が最終的にHER-2陽性であった.しかし,CNB がscore2+ の症例のうち最終的にHER-2陽性であったのは16.6%であり,多くは最終病理診断でHER-2陰性であった.CNB 検体でのHER-2の評価は有用と考えられるが,さらに感度と陽性的中率を上げる努力が必要であり,必要に応じFISH 法を追加することが望ましいと考えられた.(平成23年10月31日受理)
著者名
水藤 晶子,他
38
1
1-10
DOI
10.11482/KMJ-J38(1)001

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