Online edition:ISSN 2758-089X
肝動脈塞栓術(TAE)の治療効果について―病理組織学的側面から―
肝細胞癌の治療法として肝動脈塞栓術(TAE)が普及して以来10年を過ぎた.われわれも過去7年間に200例近くのTAEを経験し諸種の観点から検討し報告してきた.本論文ではTAE施行後の肝癌組織について検索し, TAEの効果と限界について考察を加えた.TAEの塞栓効果は肝癌の形態とくに被包型か否かによるといわれているが,腫瘍血管内のゼラチンスポンジの塞栓状態にも関連する可能性のあることを示した.リピオドール単独のみ動注した場合の壊死効果とTAEにリピオドールを併用した場合のそれを対比し,リピオドール単独では壊死効果を認めないことも,病理組織学的検討から明らかにした.一般にリピオドールと抗癌剤の懸濁液の動注はゼラチンスポンジ併用の有無にかかわらず有効であるとされているが,抗癌剤がリピオドールからどのように遊出して肝癌の壊死をもたらすかの詳細は必ずしも明らかでなく,これらの動態について病理組織学的裏付けが検討されるべきであろうと考えられる.(平成元年3月30日採用)
- 著者名
- 山本 晋一郎,他
- 巻
- 15
- 号
- 2
- 頁
- 209-216
- DOI
- 10.11482/KMJ-J15(2)209