Online edition:ISSN 2758-089X
冠狭窄を作成した実験的大動脈弁閉鎖不全犬において血管拡張剤(Hydralazine)が心血行動態と局所心筋に及ぼす効果に関する研究
冠狭窄を作成した実験的大動脈弁閉鎖不全(AR)犬で,血管拡張剤(Hydralazine,H)の心血行動態と局所心筋に及ぼす効果について検討した.雑種成犬28頭を対象に,バスケットカテーテルを用いてARを作成し,心拍数は,洞結節を破壊し右房ペーシング(毎分140拍)にて一定とした. H 0.4 mg/kg を経静脈的に投与し,非冠狭窄群と冠狭窄群(20~40%の冠血流量減少)において,心血行動態指標,局所心筋壁運動と乳酸代謝を測定した.H投与により,冠狭窄群では,平均大動脈圧と冠血流量は有意に減少し,冠狭窄領域における心筋短縮率と乳酸摂取率は有意に低下した.非冠狭窄群では,全および前方一回心拍出量は有意に増加し,逆流量は有意に減少したが,冠狭窄群では全一回心拍出量(TSV)に一定の変動はみられなかった. TSVが低下する例では,H投与前の平均大動脈圧は有意に低値で,H投与後の冠血流量減少は有意に大であった.さらに, TSVの変化は冠血流量のそれと有意に相関した. 以上の結果から,冠狭窄を有するARでは,血管拡張剤の心血行動態に及ぼす効果は,冠血流量減少に伴う局所心筋虚血の有無と程度に左右されるものと考えられた.(平成元年9月22日採用)
- 著者名
- 覚前 哲
- 巻
- 15
- 号
- 3
- 頁
- 391-404
- DOI
- 10.11482/KMJ-J15(3)391