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Online edition:ISSN 2758-089X

両側卵巣・副腎摘出成熟ラットにおける⊿4-AndrostenedioneのAromatization活性に関する研究

著者が新しく提唱した閉経婦人特発性高エストロゲン症における血清estrone (以下E1)高値及び健常閉経婦人へのACTHの投与による血清E1,estradiol (E2)値の増加が認められたことより,それらの生成機序を明らかにする目的で,卵巣・副腎摘出成熟ラットに⊿4-androstenedione(A)0.05mg腹腔内投与し, RIAで血清E1, E2値を測定した.血清値は,対照群(n=13)では,E1 83.0±32.8 pg/ml (mean土SD,以下同様),E2110.6±30.5 pg/mlで,両側卵巣・副腎摘出群(n=8)では,E1 29.3±19.8 Pg/ml, E236.8±19.5 pg/ml,で,両側卵巣・副腎摘出A投与群(n=17)では,E1 42.2±12.9pg/ml, E2 51.4±12.7 pgr/ml であった.以上から両側卵巣・副腎摘出成熟ラットでは,卵巣・副腎以外の末梢組織でAよりE1,E2がほほ等量転換生成されることが確認された.これらの成績は,末梢でaromatizationを通して転換生成されるのは,主としてE1であって末梢で転換生成されるE2はわずかで,ほとんど血清E2値に関与しないと指摘されている成績とは合致しないものであった.また,末梢におけるE2の生成について以下の二つの経路すなわち(1)A→EI及びA→T→E2 (2) A→E1→E2が考えられるが,今回の検索では血中testosteroneの測定が行われていないので,どちらの経路が実際に作動しているかは決定できなかった.これらの成績は,さらにヒトでのより詳細な研究が望まれるが,末梢においてAのaromatizationにより,E1のみならずE2も相当量転換生成されるという成績は,閉経婦人特発性高エストロゲン症での血清E1高値及び健常閉経婦人へのACTH剌激によってみられるE1,E2高値の生成機序を解明する上で,重要な知見と考えられる.(平成元年10月27日採用)
著者名
岡野 有希子
15
4
602-608
DOI
10.11482/KMJ-J15(4)602

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