低出生体重児における児自身の母親からの人乳の栄養学的効果を明確にする目的で窒素出納,尿中排泄溶質量,脂肪出納,糞便中排泄脂肪分画,血液酸塩基平衡,1日体重増加量などを測定した.その結果,N蓄積率は59.3±7.6%であり,熱処理された貯蔵人乳や冷凍人乳での成績よりすぐれていた.尿浸透圧および尿中排泄溶質量は問題ない成績であった.脂肪吸収率は86.6±5.3%で,熱処理された貯蔵人乳や人工乳での成績より高値であった.血液酸塩基平衡は, actual pH, base excess とも正常範囲内であり,アシドーシスはみられなかった.1日体重増加量は31.6gであり,人工栄養児での成績より少し劣ったが,1日30g以上の増加でもあり,特に問題ないと解した.以上,児自身の母親からの人乳は,出生体重1,500g 以上の低出生体重児においては問題なく与えうるものと結論した.(昭和62年8月6日採用)
著者名
河野 幸治
巻
14
号
1
頁
52-60
DOI
10.11482/KMJ-J14(1)52
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