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Online edition:ISSN 2758-089X

人乳哺育低出生体重児の栄養代謝研究 第2編児自身の母親からの人乳で哺育された低出生体重児のアミノ酸摂取量,血漿アミノ酸濃度および尿中排泄アミノ酸量について

低出生体重児哺育における児自身の母親からの人乳の栄養学的効果を明確にする目的でアミノ酸摂取量,血漿遊離アミノ酸濃度,尿中排泄アミノ酸量などについて検討し,タウリン添加人工乳(蛋白質2.19 g/dl, アルブミン・グロブリン0.99 g/dl, カゼイン1.20g/dl,脂肪2.60 g/dl, 糖質9.54 g/dl,灰分0.38 g/dl, エネルギー70.4 Kcal/dl,タウリン3.00 mg/dl)での成績と比較し,次の結果を得た.1)アミノ酸摂取量では, TanとCysは人乳群において,これらを除く他のアミノ酸は人工乳群においてそれぞれ有意に高値であった.2)必須アミノ酸の血漿濃度はすべてが人乳群において人工乳群より有意に低値であり,これは摂取量の反映であると解した.3)CysとMet濃度は人乳群において有意に低値であった.人乳群のCys摂取量は高値, Met摂取量は反対に低値であったことからして, MetからCySHへの転換に制限のないことが窺えた.4)GluとGln濃度は人乳群において有意に高値であった.これは人乳群におけるエネルギー不足をカバーするためのアミノ酸異化の関与であろうと考察した.5)Tauの血漿濃度は両群間で有意差がなかったが,摂取量と尿中排泄量は人乳群が有意に高値であった.人乳中には過量のTauが含有されていることを知った.6)尿中排泄量はTauを除くほとんどのアミノ酸が血漿濃度を反映した.以上,児自身の母親からの人乳は,出生体重1,500 g 以上の低出生体重児においてはアミノ酸代謝の面でも問題なく与え得ると結論した.(昭和62年10月22日採用)
著者名
河野 幸治
14
2
180-188
DOI
10.11482/KMJ-J14(2)180

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