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Online edition:ISSN 2758-089X

膝蓋腱を用いた前十字靭帯再建の検討と文献的考察

 2002年1月から2010年11月の間に当科で膝蓋腱を用いた前十字靭帯(ACL)再建を受けた1038例中6か月以上経過観察ができた866例(経過観察率83.9%)の手術成績を検討した.手術は膝蓋腱をbone to tendon to bone graft(BTB)として用いた.術後は10週でジョギングを開始し,6か月での直線全力疾走と1年後の競技スポーツ完全復帰を目標としたリハビリテーション・プログラムを進めた.受傷時年齢は9~74歳で平均24.7歳であった.性別は女性439例(50.7%),男性427例(49.3%)であった.術後全可動域が544例(62.7%)に得られた.術後平均観察期間は449.2日で,視覚的アナログ尺度(VAS)で得られた自覚的復帰度合いが8以上は538例61.9%であった.術後のMRI でACL の連続性が観察されたのは793例(98.5%)であった.術後775例(89.5%)に再鏡視を施行し,ACL は629例(81.2%)に良好な滑膜被覆が観察され,内側半月板は657例(84.8%),外側半月板は666例(85.9%)が明らかな変性などの悪化を認めなかった.受傷から再建術施行までの期間が2週未満と2週以上で比較したが,関節可動域(ROM),VAS による自覚的復帰度合い,MRI 所見,再鏡視所見とも有意差を認めなかった.手術施行時年齢が40歳未満と40歳以上で比較した結果は5°以上の伸展制限か10°以上の屈曲制限を認めた症例数とVAS による自覚的復帰度合いが5~7の症例数が有意に40歳以上で多かったが,MRI 所見,再鏡視所見では有意差は認めなかった.受傷から再建術施行までの期間が2週未満でも術前後のリハビリテーションなどの患者教育を徹底することで術後成績を向上することができた.手術施行時年齢が40歳以上でも再建術を施行することにより,関節軟骨のけば立ちや半月板の擦り切れなどの変性進行を防ぐことができた.(平成23年8月25日受理)
著者名
中村 恭啓
37
4
185-194
DOI
10.11482/Kawasaki_Igakkaishi37(4)185-194.2011.pdf

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