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Online edition:ISSN 2758-089X

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(Pseudo-Huntington's Form)の1臨床例

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症のpseudo-Huntington's form の1例を報告した.45歳女性, 1976年35歳頃より動作がぎこちなくなり, 1979年頃より記憶,感情障害,四肢や顔面のchorea,歩行障害が出現し, 1983年頃より症状が増悪したため, 1986年6月に入院した.患者の家系図からは常染色体優性遺伝の疾患が疑われた.神経学的には,爆発性断綴性構音障害,顔面,頸部と四肢のchorea,四肢の協調運動障害を認め,歩行はwide-base, IQ (WAIS)は64であった.脳波では群発性高振幅徐波を認め,頭部X線CTでは,脳幹部が中等度萎縮,小脳が軽度萎縮していたが,大脳半球,尾状核,中小脳脚に萎縮はなかった. 123I-IMPによるSPECTでは,基底核に集積低下を認めたが,大脳半球,小脳半球は正常であった. MRIはX線CTの所見以外には,基底核,歯状核,赤核に異常な信号域はなかった.haloperidolの投与にてchoreaは消失し,背後に隠れていた小脳失調症状が前景に現れた.本症のchoreaは淡蒼球ルイ体系,小脳症状は歯状核赤核系の病変によるものと考えた.これらの系統が連合性に変性する常染色体優性の遺伝疾患,つまり本症は歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)か, Joseph病の可能性があるが,臨床症状,脳波,X線CT, SPECT, MRI所見から,臨床的にはDRPLAとするのが妥当と思われた.しかし,両疾患とも独立疾患としてはまだ確定されておらず,本症の位置づけについては,以後の詳細な検討が必要である.(昭和62年10月1日採用)
著者名
小西 吉裕,他
14
2
277-285
DOI
10.11482/KMJ-J14(2)277

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