Online edition:ISSN 2758-089X
甲状腺濾胞腺腫と腺腫様甲状腺腫の組織像の計量化による検討
甲状腺濾胞腺腫と腺腫様甲状腺腫は臨床的には結節性甲状腺腫の範疇に属し,組織学的 にもその鑑別が困難なことがある.本研究は両者並びに正常甲状腺の濾胞についてその組 織像の計量化を行い,鑑別診断が可能であるか否かを試みる目的で行ったものである. 解析は個々の濾胞像と組織の全体像の数量化により行い,腺腫様甲状腺腫については 3次元的解析による検討も加えて行った. 個々の濾胞像は,その面積,周長,長径,形状係数,および濾胞に対する濾胞上皮の割 合(以下EF比)を測定し,組織の全体像は濾胞の配置と,その個数と面積の密度により 検討した. その結果,腺腫は正常と比較すると,小型で円に近い形状を呈し,EF比は高値を示し た.空間配置は規則型の配置をとり,大型濾胞の密度は面積,個数とも低値を示した. これに対し腺腫様甲状腺腫は正常に比べ,様々な形態を呈し,空間配置は集塊型の配置 を示し,大型濾胞の面積に対する密度は高値を,個数に対する密度は低値を示した. さらに腺腫様甲状腺腫の大型濾胞を用いた立体再構築による検討では,大型濾胞は単純 な球状の形態ではなく,その周囲に多数の娘濾胞ともいうべき小濾胞様の突出を認める半 月状の形態を示し,このような変化が腺腫様甲状腺腫における濾胞形状の多様性の一因を なすものと推測された.(昭和63年2月17日採用)
- 著者名
- 山根 康彦
- 巻
- 14
- 号
- 3
- 頁
- 328-335
- DOI
- 10.11482/KMJ-J14(3)328